ラスベガスの「はの」です。
皆さんの中には、友達や家族、職場の仲間から自分の行動が掻き立てられるような経験や心に残っている言葉が1つはあると思います。
以前ラスベガスで働いていた旅行会社で、上司の方が口癖のようにお話しされていた言葉が今でも忘れられません。
私達は世界のどこかでみんなと繋がっているから、常に世界平和を願い続けないとダメなのよ。自分達さえが良ければいいという考えじゃダメなの。
初めてこの言葉を聞いてからはかれこれ10年が以上が経ち、仕事で世界各国の観光施設や周辺情報を調べていると、
国によって環境は違えども、そこには私達となんら変わりのない人々の生活や暮らしがあり、この言葉にある意味をふと考えてしまいます。
長年観光の仕事に携わってきて楽しくワクワクするような場所へ行くだけが観光ではない
と、旅行へ行く時にはその地域にある戦争の歴史を伝える資料館などへ行くように心がけています。
ラスベガスにはあまり知られてはいませんが、ネバダ州で核実験が行われた様子を伝えるAtomic Museum博物館があり、
ミュージアムに展示されているもの、日本の展示品、交通手段などをご紹介します。
そんな私はラスベガス在住約18年、現在は旅行関連の仕事をしています。
それでは早速始めて行きましょう!
Atomic Museum
この博物館は、ラスベガスの中心地ベラージオホテルから車で約10分、
2005年に設立された非営利団体のネバダ核実験場歴史財団(Nevada Test Site Historical Foundation)が運営しています。
外観は2階建てですが博物館があるのは1階部分です。
1階中央の出入り次から入ると右手にチケット売り場がありますので、まずはそちらでチケットを購入。
料金:大人$29、子供(7~17歳)$15、6歳以下 無料
入口のすぐ横には長崎に投下された原爆(Fat Man)の模型が展示されてあります。
実際にこの横に立ってみると写真で見るよりも小さく感じます。
大人3~4人が手を繋いで輪になったサイズです。
この博物館には大きく15の展示室に分かれていて説明を全て読むと1日は掛かると思いますので、ほんの一部を簡単にご紹介させて頂きます。
※写真撮影はOKと確認済み。
エントランスから入って行きましょう!
Entry Galley
ここではアメリカで行われていた原爆実験のいきさつやなぜこの地域が選ばれたのかなど、第2次世界大戦の後に行われていた原子力爆弾開発のプログラムやネバダ州で行われていた実験をビデオやパネルで紹介されています。
館内にはガイドさんが数名いらっしゃいますので時間帯や込み具合によっては気さくに話しかけてくれます。
今回出会ったガイドさんはご自身の子供の頃の話などをしてくれて、人に伝えることが好きなタイプの人のようでしたのでより勉強になりました。
Atomic Age Gallery
当時のアメリカは(言葉選びが悪いかもしれませんが)原爆実験は良いモノ(=最新の技術開発)として捉えられており、この実験が人々の流行にもなっていた様子を垣間見ることができます。
原爆投下後にできる雲とラスベガスがデザインされている商品や本が展示されており、その他にもこのような商品やイベントがありました。
・ポストカード
・飲料水
・帽子
・お菓子
・キーホルダー
・アクセサリー
・おもちゃ
・クリスマスデコレーション
・ミス原爆コンテスト
Atmospheric Testing Gallery
原爆実験が始まった初期に西太平洋の海上実験やネバダ州の砂漠で行われていた大気実験について紹介されているコーナーへ進むと当時の様子が詳しく書かれてあります。
また第一次世界大戦の時に使われていたNevadaというアメリカ海軍が所有していた船はこの時期にビキニ環礁で行われた水爆実験に使われその時の様子や船が展示されていました。
Ground Zero Theater
原子力爆弾のテストが行われた爆心地(Ground Zero)。原爆を投下した時の光や爆風の様子を体感することができます。
Underground Testing Gallery
1963年以降にもネバダ州やニューメキシコ州で地下の核実験が行われていたことをご存知ですか?
私はこの博物館を訪れるまでは知りませんでした。
地下実験で使われた核爆弾を入れるトンネルの展示や地面に穴を掘ってそこに原爆を埋めて爆発させた当時の様子や機械・道具などが展示されています。
Control Point
ここでは地下実験の現場で働いていた気象予報士、科学者、現場を取り仕切る人の会話や原爆の実験場から宇宙飛行士の訓練所や科学者による実験場所へと変化した様子を伝えています。
The Bomb Without The Boom
Gallery
ネバダ州の核実験場で働いていた方々の紹介を見ると科学者・政府関係者・一般市民など様々で、職業によってはこれがどのように使われるかを知らないような人もいたようです。
また軍関係では原爆実験とそれを想定した訓練も行われていたということが紹介されていました。
TRINITY (Harry Reid Exhibit Hall)
TRINITYとは1945年7月16日にアメリカ・ニューメキシコ州で初めて核実験が行われた時に使われてたコードネームです。
※10年前にこの博物館へ行った際にこの展示室はありませんでした。
(建物正面玄関を中に入ると正面に見えています)
原子力爆弾が造られた経緯や科学者の紹介、
その奥には原爆が投下された後の広島・長崎・福岡の様子が展示されていました。
広島の原爆記念館にも展示されてあるように、原爆で亡くなった弟の遺体を背中に抱っこして火葬場で順番を待っている男の子の姿が展示されていました。
その横にはこの時代日本では多くの人が着物を着ていたものの、福岡県のある街で出会ったコートに下駄を履いている姿がカメラマンの目に留まり尋ねてみるとこのような返答があったと書かれています。
“I lost my entire family and most of my friends. They were like you and me, Innocent ones, and they did not deserve to die. I can forgive America, but don’t ask me to forget. Like planting seeds in the dirt, buildings will rise out of these ashes, but unfortunately not in my life time. You tell your people what it was like after the bomb.”
【日本語訳】私は家族全員とほとんどの友人を失いました。 彼らはあなたや私と同じ無実の人達であり死ぬ価値はありませんでした。 アメリカを許すことはできますが忘れてくださいとは言わないでください。 土に種を植えるように、これらの灰の中から建物が立ち上がるでしょう、しかし残念ながら私が生きている間ではないでしょう。 あなたは人々に原爆の様子を伝えてください。
こちらの言葉にあるように戦争で犠牲になる人は私達と何ら変わりのない一般市民や国の為に働いている方々、自分達が良ければいいという考えではなく一人一人が考える必要があるという事を今この歳になって考えさせられます。
Spy(新設)
最後にAtomic Lounge & GalleryにはSPYという展示場が新設されていました。
こちらは第2次世界大戦にドイツ軍で潜水艦などとの通信用に開発された暗号機エニグマを解読するスパイ用の機械です。
この展示室で暗号機を見るまではエニグマについては全く知りませんでした。自宅に帰ってからこのエニグマを開発した人、これを使って暗号の信号を送っていた労働者、第2次世界大戦で使われた経緯などのドキュメンタリーをみると、
これを発明した人は偉大な発明家でこの精密機械が今のコンピューターの元になって素晴らしい発明だと感じる一方で、戦争によってこのような使われ方をされていたという事実を知りなんとも複雑な心境。
営業時間&交通手段
Atomic Museumは空港やラスベガス大通りから車で約10分。
比較的行き易い場所にありますので、Uber・タクシー・バスなどでぜひ足を運んでみて下さい。
住所:755 E Flamingo Rd, Las Vegas, NV 89119
営業時間:9am~5pm
移動手段:Uber、タクシー、バス
(駐車場無料)
時間:約1~2時間程度
禁止事項:ビデオ撮影・飲食・携帯電話はミュートにする
(大きな祝祭日以外年中無休)
ラスベガスのハリーリード国際空港で乗り継ぎが5~6時間あり、時間に余裕がある方は、タクシーやUberで行ってみてください。
(2023年6月現在の情報)
まとめ
今回はAtomic Museum(核実験博物館)をご紹介させて頂きました。
ラスベガスはカジノやエンターテインメントの街ですが、その裏側ではこのような歴史があり、核実験が行われていたという事実を知るのも観光の一つだと思っています。
日本から海外に出て、実際にそのような施設を現地の目線で知る&見る事によって、また違った角度から戦争の悲惨さや日本をみるきっかけになると思います。
世界中のどこかでみんなと繋がっているから、常に世界平和を願い続けないとダメ、自分達さえが良ければいいという考えじゃダメ。
観光地は楽しいばかりではありません。
今の時代を生きている私達は、未来を生きる子供達に同じ過ちを起こさない為にも、一人一人が小さな事でも出来ることを行動に移していかなくてはいけないと思っています。
こちらの記事を読んだ方が、一人でもこちらの博物館に足を運んで頂けると幸いです。
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訪れる前にオフィシャルウェブサイトやYoutubeで予習されると、より理解度が高まると思います。